「住み慣れた家を手放したくないけどまとまったお金が必要…」という方にはリースバックがおすすめです。リースバックとは、不動産買取業者などに家を買い取ってもらう代わりに「家賃」を払い続けることでそのまま住み続けることができる方法です。
家賃は発生しますが、住み慣れた家にそのまま住むことができるだけでなく、まとまったお金が入るためうれしい仕組みですよね。しかし、リースバックには気づきにくい「罠」があるのはご存じでしょうか。
そこでこの記事では、これからリースバックを利用しようと考えている人のために、リースバックの罠を理解するためのポイントを解説します。
この記事を読めば、リースバックの罠にはまらないための対策を知ることができます。ぜひ最後までチェックください。
この記事を執筆した宅地建物取引士 | 岩井 佑樹 |
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事業所 | 合同会社ゆう不動産 |
保有資格 | 宅地建物取引士、シニアライフ診断士 |
公式Twitter | @rockwellsolo |
リースバックの3つの問題点とは?
リースバックには主に3つの問題点があります。問題点を把握することでリースバックを選択するかどうかの判断材料にしましょう。
問題点1.買取価格が相場よりも安くなりがち
通常、家を探している人向けの金額を出す際には、近隣の事例や路線価、地価公示価格などを参考に査定します。しかし不動産買取会社が購入するリースバック物件は、一般売却価格の6割程度の価格でしか買取を行いません。
買取業者は賃貸事業として買い取った物件を運営するため、買取価格を家賃収入で早めに回収したいのが目的です。そのため、相場よりも安い買取額になります。
問題点2.家賃が相場より高くなりがち
高額な家賃設定をしてくる買取業者には注意が必要です。不動産買取業者の中には「家賃を高く設定して、できるだけ早く購入価格分を回収したい」という指針で買取を判断する業者もいます。
例えば以下の表のように、買取業者が利回り10%で購入希望している場合、家賃を上げれば購入価格も高くなるのが当然です。しかし、業者によっては、家賃は高く設定しても、購入価格は安く設定する業者がいます。
【表面利回り10%の場合の家賃設定と購入価格の例】
表面利回り | 家賃設定 | 購入価格 |
10% | 8万円 | 960万円 |
10% | 10万円 | 1,200万円 |
10% | 12万円 | 1,440万円 |
【購入価格は据え置きで家賃設定を高くした場合】
表面利回り | 家賃設定 | 購入価格 |
10% | 8万円 | 960万円 |
12.5% | 10万円 | 960万円 |
15% | 12万円 | 960万円 |
この場合、買取業者が得をする家賃設定となるため注意が必要です。あまりにも、相場とかけ離れている家賃を設定してくる業者には気をつけましょう。
問題点3.資産として相続できない
リースバックは、所有していた土地や建物を売却して手放すことです。リースバックをすると所有者はあくまでも不動産買取業者であり、あなたは賃借人となります。
家の所有者(賃貸人) …家を購入した不動産買取業者 |
家を借りている人(賃借人)…家を売却したあなた |
そのため、子孫に相続財産として土地や家を残せなくなります。将来、相続財産として子孫に残したいと考えている人は一度、考え直した方がよいでしょう。
リースバックの3つのリスク
リースバックを利用するためには、家賃の支払いは必須です。さらに家を勝手にリフォームできないことや、強制退去のリスクもあります。しっかり把握しておきましょう。
リスク1.毎月の家賃が発生する
持ち家の場合、家賃や住宅ローンを支払う必要はありません(住宅ローンを完済している場合)。しかしリースバックの場合は、賃貸として家を借りることになります。
そのため、毎月家賃が固定費として発生することが大きな出費です。固定費としてまとまったお金がかかるようになるため、生活スタイルや収入、貯金などを考慮する必要があります。
リスク2.リフォームなどが自由にできない
前述の通り、リースバックは賃貸物件と同じです。所有者の家を借りて住んでいることになります。
今までは、お部屋のリフォームや修繕を自由にできましたが、リースバック後は、家のリフォームなどを行う場合は貸主の承諾が必要です。
貸主に無断でリフォームなどを行った場合、退去時に「原状回復」に戻す必要があるため気をつけましょう。
参考資料:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドラインについて」
リスク3.定期賃貸借契約なら2年後に退去の恐れアリ
賃貸借契約の種類には主に2種類あります。
- 普通賃貸借契約
- 定期賃貸借契約
普通賃貸借契約は、契約期間満了後も更新手続きをすれば引き続き住み続けることが可能です、一方で定期賃貸借契約は、期限付きでの契約になるため原則更新がありません。つまり、2年契約の場合、賃貸契約期間が終わると契約が終了します。
リースバックの賃貸借契約が、普通賃貸借か定期賃貸借かをしっかり確認しておかないと、2年後の契約満了時に後悔することになるでしょう。リースバックの賃貸借契約が定期賃貸借契約になっている場合は、貸主の買取業者に、普通賃貸借契約への変更などを相談することをおすすめします。
リースバックする際の注意点
リースバックをする際には、3つの注意点に留意しましょう。
注意点1.複数の不動産買取会社に依頼
リースバックをお願いする会社を、1社だけにしてしまうことほど危険なものはありません。複数の不動産買取会社に査定見積もりをお願いすれば、適正な買取価格や家賃を知ることが可能です。
さらに複数の不動産買取会社からの話を聞くことで、だまそうとしている会社や、買取価格を大きく下げてくる悪徳な会社などを見分けることができます。
注意点2.賃貸契約の内容をよくみる
賃貸借契約を締結する前に、契約書の案を確認させてもらうのもおすすめです。契約書の内容で特に確認すべき点は以下の通りです。
- 契約の種類(普通賃貸借契約か定期賃貸借契約か)
- 買取価格
- 売却に必要な諸費用
- 賃料や敷金礼金の有無
- 賃貸契約を途中で解約する場合の取り決め
- 退去時の違約金など
売買契約や賃貸契約の内容は一度決めたら、特別な理由がない限り変更不可です。契約前にしっかり目を通るようにしましょう。
専門的な内容で分からない文言などがある場合は、専門家の弁護士や司法書士などにチェックしてもらう方法もあります。
注意点3.無理のない家賃設定にする
注意点の最後は、家賃設定の決め方です。リースバックで家に住み続ける場合、家賃を払い続けなくてはいけません。
あまりにも高い家賃であれば、家賃を滞納してしまい最悪の場合、強制退去になりかねません。
家賃滞納により強制退去になることで怖いのが、住まいを失うだけでなく信用問題に影響することです。いわゆる「ブラックリスト」入りしてしまえば、しばらくの間、賃貸物件に住むことができません。
買取価格に満足したからといって家賃設定を妥協せず、支払いに余裕がある価格に設定するようにしましょう。
リースバックで後悔しない為の対策
リースバックで後悔しないためには、以下の3つを実践してみましょう。
- 契約内容を3回見直す
- 家賃設定や買取価格の根拠を確認する
- 信頼できるリースバックに強い会社に依頼する
契約書の内容は必ず3回以上確認することが大切です。3回以上確認することで、見落としていた内容を確認することができ、トラブルを回避できます。
また、不動産買取会社が提案する家賃設定や買取価格に「根拠」があるのかを確かめることも大切です。不動産価格の査定額などは、根拠をもって説明する必要が不動産会社にはあります。
さらに、リースバック事業の経験が豊富であり、実績があるリースバック会社は信頼できます。HPや口コミサイトなどをチェックすることも忘れずに行いましょう。
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