キャッシュポジションとは投資資金における現金保有額のことです。投資家がリスク資産とは別口で手元に現金を確保することで投資比率を下げることができ、安全性を高めた投資のセーフティツールとして機能しています。
具体的には投資対象銘柄の待機資金・投資や事業トラブルの解決資金・相場下落時の含み損軽減・投資リスク軽減など、安定した投資を継続するために必要な仕組みをキャッシュポジションが担っています。
株式投資においては、株価が高いタイミングでは株価下落に備えキャッシュポジションを高く維持することが望ましく、投資家は年齢・リスク許容度の2つのファクターから、適正なキャッシュポジションの割合を決めています。
キャッシュポジションを高くすると「転ばぬ先の杖」となり、投資家にとってメリットが多くなりますが、高くし過ぎると投資利益が減少し非効率な投資になるため、投資金額・投資リスク・市場の変動などを熟考しながら割合を決めることが重要です。
- キャッシュポジションは投資で手元に残す現金のこと
- キャッシュポジションが高いと株価下落タイミングで希望銘柄に多く投資できる
- キャッシュポジションは投資でトラブルになったときの臨時資金になる
- キャッシュポジションは市場の株価が高い時は高くする
- キャッシュポジションは年齢・リスク許容度の2つの側面で適正値を決める
キャッシュポジションの意味とは
キャッシュポジション(cash position)とは投資資金における現金保有額の他にも、即時換金可能で流動性の高い外貨債権残高や現金持高を指します。
キャッシュポジションを高く維持することは経営者にとってメリットが大きく、企業業績が悪化したときに貨幣残高・現金持高を事業資金として利用できるセーフティーとして機能します。
- 事業運営のキャッシュポジションは手元流動性と呼ばれる未投資の現金預金・短期所有の有価証券のこと
※キャッシュポジションを高めることが重要
キャッシュポジションに該当する資金は現金・未決済株・外国通貨・国債・社債・投資信託の受益証券など様々です。
これに対し投資の世界では実際に市場で運用しているリスク資産とは別に、意図的に手をつけず保持している資金のことをキャッシュポジションと呼びます。
キャッシュポジションのポジション(position)は日本語で位置・地位を指しますが、投資関係の用語では「持ち高」の意味で使われています。
流動性の高い市場において投資家がキャッシュポジションを高めることは、相場の下落局面で取れる選択肢が増えることから、有効なリスクマネジメントの役割を担っています。
キャッシュポジションの考え方
キャッシュポジションという概念を、投資や事業運営でどのように考えれば良いのでしょうか?
キャピタルゲイン投資の目的は変動する市場環境を見極めながら株式や外貨預金を売買し、投資家の保有資産を増やすことにあります。
お金を増やすことが目的の投資の世界でキャッシュポジションを考えるとき、相場の下落局面では手元に臨機応変に使える資金が多い方が、投資家にとって有利であることはご理解いただけると思います。
- キャッシュポジションは投資を安定して継続するための必須ツールとして考える
※投資リスク分散・投資資金確保・トラブル時の準備金など多くの役割を担う
資産をすべて投資運用する場合、株式であれば保有株が下落すれば投資家の資産は大きくマイナスになります。
このとき資産の一部を投資資金に充てず手元に残しておけば、大幅な株価下落が起きてもある程度の資産を守ることができます。
また投資過程で購入したい株が増えても、投資資金として自由に使えるお金がなければ希望する投資行動は取れません。
資産を増やし事業資金を増やす目的で投資を始めた投資家が、経営する事業にトラブルが起きたときに対処する準備金として、キャッシュポジションを多めに保有するケースもあります。
このように投資活動で予測されるリスクや投資資金に備え、ある程度の資金を別に保有することは安定した投資活動・事業継続の有効な施策になります。
キャッシュポジションの比率
投資の世界ではキャッシュポジションをどのくらいの比率で保持すれば、安全性を高め効率的な投資が継続できるのか頻繁に議論されています。
常に変動している市場環境を正確に予測し売買できるのであれば、極論を言えばキャッシュポジションは不要で、フルインベストメントでも問題ないでしょう。
投資家にとってリスクコントロールしやすい確実なキャッシュポジションの比率は、それぞれの投資金額や市場環境によって左右されるため、一概に安定ラインを数値化することはできません。
- キャッシュポジションの適正比率は投資戦略・保有資産・年齢・リスク許容度などによってそれぞれ違う
※総資産の10~20%程度を現金で手元に残すなど
安定して投資で利益を出せる右肩上がりの上昇相場であれば、キャッシュポジションで手元にお金を残すより、フルインベストメントの方が効率良く増益します。
かといってキャッシュポジションを減らしすぎると、株価が下落したときに大きな損失を被ります。
一つの目安ですが、通常は総資産の10~20%程度を現金などで確保し、キャッシュポジションとして大きな株価下落に備えるという考え方もあります。
キャッシュポジションの比率を高めることはもしもの際に有効な対策となるため、今後の下落相場に備えたい投資家は、キャッシュポジションの比率を高める方が安全です。
キャッシュポジションが高いとどうなる?
投資の世界でキャッシュポジションが高いことは、リスクコントロールされた安定した投資を継続するための保険のような役割を果たしています。
即時使える現金や現金化できる資産を多く確保している方が、新たな投資チャンスを逃すことなく冷静な対処が容易であることは言うまでもありません。
しかしキャッシュポジションが高いことでメリットが大きくなる反面、投資にとってデメリットになることもあります。
- キャッシュポジションを高くするメリット
・臨機応変に投資できるお金の確保
・投資で損失になったときのリカバリー資金など - キャッシュポジションを高くするデメリット
・保有する現金が多いと非効率な投資になる
前述している通り資金をすべて投資に充ててしまうと、投資したい時に資金調達が間に合わず、新たな投資チャンスを逃すリスクも考えられます。
投資家はキャッシュポジションを高くすることで、転ばぬ先の杖として暴落相場やトラブルに対応できる資金を事前に確保できます。
その一方で必要以上にキャッシュポジションを高くしてしまうと、本来投資で循環させる資金が手元に残るため、非効率な投資を継続することで利益が先細りとなるデメリットも考えられます。
一概にキャッシュポジションを高くすればいいという簡単な問題ではないことが、投資におけるキャッシュポジションの存在を難しくさせるひとつの原因になっています。
キャッシュポジションを高めるべき時期
一般的に投資の世界でキャッシュポジションを高く維持するタイミングは、市場の株価が高い時期であるといわれています。
- 株価が高い時期ほどキャッシュポジションを高く維持したい
※希望する銘柄が下落したタイミングで効率よく投資するため
キャピタルゲイン目的の投資家は株式投資で購入した銘柄を常に保有することはなく、多くの場合で保有する株価が上がったタイミングで売却し利益を得ます。
そのため将来の株価変動を予測し売買を行いますが、購入するタイミングですでに株価が高ければ、同じ金額で投資しても得られる利益は減少します。
多くの投資家は株価の高騰が落ち着き、さらに希望銘柄が下落するタイミングで大きく投資したいと考えています。
また資産を現金ではなく株式で保有していると、万が一株価が下落したときは「含み損」を抱えることになり、売却した時点で損失確定になってしまいます。
含み損は投資家が株を売却前に株価が持ち直せば損失になりませんが、回復を見越して売却を渋ると更なる損益を生む可能性もあります。
結果としてこのように株価が高いタイミングで投資にお金を多く配分してしまうと、高い確率で非効率な投資を余儀なくされます。
株価動向を完全に予測することはできませんが、将来的な含み損のリスク軽減も併せ、株価が高い時期はキャッシュポジションを高く維持することがひとつの安定行動になっています。
キャッシュポジションを適正に保つ方法
キャピタルゲインを目的とした投資では、「買うタイミング」「売るタイミング」の決断を常に求められ、正しければ利益・誤れば損失という結果が後から起こります。
キャッシュポジションを一切考えず、フルインベストメントで大きく投資することもひとつの考え方ですが、それですべての人が成功できるほど甘くないのが投資の世界です。
長期的なビジョンで投資を考えたとき、如何にキャッシュポジションを適正に保てるかが、安全に投資を継続するひとつのポイントになるのです。
- キャッシュポジションは年齢・リスク許容度の2つのファクターで適正な配分を考える
※年齢をパーセントにして保有・許容損益から計算した数字まで保有
キャッシュポジションの適正値について、投資の世界でメインストリームになっている2つの考え方をお伝えします。
一つ目はシンプルに投資家の年齢を、キャッシュポジションを適正割合にして投資する方法です。
具体的には20代の人は20%、50代の人は50%の割合でキャッシュポジションを保つという方法で、この考え方を参考にしている投資家は大勢いるようです。
二つ目めは今後投資で起こりうるリスクを分析し、損失にラインを引いて投資を継続する方法です。
例えば現在投資している流動資産の最終的な損失を30%まで許容できる場合、それを見越しておおよそ70%の資産が残るように、キャッシュポジションの配分を考えるというものです。
実際にキャッシュポジションの割合を計算し、正確に70%の純資産を確保することは難しいですが、キャッシュポジションを適正に保つひとつの考え方として広く浸透しています。
どちらの方法も共通事項として一定の割合でキャッシュポジションを確保しており、投資家が安全な投資をおこなうために、キャッシュポジションが重要な意味をもつことが明確に示されています。
この記事の監修公認会計士・税理士 |
水野 崇 |
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事務所 | 水野総合FP事務所 |
資格 | 日本FP協会認定CFP®︎( 日本FP協会) |
備考 | 記事監修のお知らせ◆「キャッシュポジションとは?」 |
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