補助金・助成金は事業主が会社の起業や安定した事業継続を目的に利用できる支援制度ですが、両者には大きく分けて管轄行政・財源・使用目的・公募期間の4つの違いがあります。
補助金・助成金は事業主に支給されるタイミングが事業活動後・支給後に返済不要という2つの共通事項がありますが、事業主が不正受給で不当に補助金・助成金を受け取った場合は違約金など重いペナルティがあります。
補助金は支給金額が高く多くの業種で利用できる補助金制度が充実しているメリットがありますが、公募期間が短く審査が厳しいため必ず支給される保証がないというデメリットもあります。
助成金は年間を通し利用できる制度が多く、基本的に条件を満たせば事業主に助成金が支給されることがメリットですが、届け出た事業計画通りの実行をせずに反対に指導を受けて新聞等に公表されて、事業活動に悪影響を与えてしまうデメリットも少なからず存在します。
- 補助金と助成金は経済産業省か厚生労働省で管轄行政が違う
- 補助金と助成金は税金か雇用保険料で財源が違う
- 補助金と助成金はどちらも返済不要
- 補助金と助成金では助成金の方が支給を受け取りやすい
- 補助金は公募要項を満たしていても不採択になることがある
補助金と助成金の違いは
補助金・助成金には大きく分けて4つの違いがあり、混同してしまうとトラブルの原因になるため、それぞれの差異を確認しておきましょう。
一つ目は、組織の違いで補助金は経済産業省・助成金は厚生労働省という管轄の違いです。
それぞれの要綱等は各行政が決めます。
二つ目は、補助金は税金・助成金は雇用保険料という財源の違いです。
税金はライフスタイルの様々なシーンで支払うお金であり、雇用保険料は会社で働く社員の給料から支払われるお金です。ただし、助成金の財源はこの雇用保険料の中でも会社の負担分の中からだけ支払われます。
三つ目は、使用目的が補助金は新規事業など・助成金は主に雇用関係となり、同じ支援制度でも事業主の事業計画により差別化されています。
多くの業種が対象となる補助金・助成金制度があるため、最適な支援制度を事業主が選んで利用します。
四つ目は、募集期間で補助金は短期間数回・助成金は年間を通して事業主が応募できるという違いです。
特に補助金の公募は予算編成時期に集中しており、タイミングを逃すと受けられる補助金制度の数が大幅に減るので注意してください。
管轄をしている行政省庁が違う 経済産業省 or 厚生労働省
補助金・助成金はどちらも事業を通して利益を追求する事業主をサポートする制度ですが、大元の管轄行政機関が違います。
- 補助金は経済産業省・助成金は厚生労働省が管轄
※それぞれ別の行政機関が制度を規定している
補助金は経済産業省・助成金は厚生労働省が法律や制度を決めており、それぞれ独立した行政機関が施行する制度を、事業主が適時利用しながら事業を継続しています。
財源が違う 税金 or 雇用保険料
補助金は税金から、助成金は雇用保険料からお金が準備されており、それぞれ徴収元の財源が違います。
- 補助金は税金・助成金は雇用保険料が財源
税金は日常生活で買い物をすれば必ず発生する消費税を含め、普段の生活であまり意識することなく税金として補助金が徴収されています。
集められた税金は必要に応じて補助金に姿を変え、事業主に還元されることで経済活動に役立っています。
対して助成金は雇用保険料が財源となり、会社負担分の雇用保険料が財源です。社員の支払う雇用保険料は財源ではありません。
仕事を退職した後に一定期間受けられる失業等給付や、事業主が雇用促進の目的で申請するトライアル雇用助成金なども雇用保険から捻出されています。
使用目的が違う 新規事業 or 雇用関係
国や地方自治体がお金を給付する目的により、補助金・助成金は明確に差別化されています。
- 補助金・助成金は同じ支援制度でも使用目的が違う
※補助金は新規事業のお金・助成金はトライアル雇用のような雇用関係のお金と考える
例えば会社や事業を新規に立ち上げる場合、多くのお金が必要になり事業主は資金調達に奔走することになりますが、このとき活躍するのが補助金であり、銀行からではなく行政による資金援助でお金を準備することができます。
対して助成金は労働者が再就職するとき利用するトライアル雇用、パート社員の待遇改善を図るキャリアアップ助成金など、基本的に雇用保険に加入している労働者を対象にお金が使われています。
労働力確保・仕事の効率化、労働者の待遇改善等として助成金が事業主に支給されるため、会社は安定した労働力の確保・労働者は待遇改善とメリットがあります。
募集期間が違う 短期間数回 or 通年
お金が必要で補助金・助成金制度に申し込みたくても、そもそも公募がなければ制度を利用することはできません。
補助金・助成金はそれぞれ募集しているタイミングが違いますが、特に補助金に関してはいつでも受けられる制度ではないことに注意してください。
- 補助金・助成金は募集期間が異なる
※一般的に補助金は単発・助成金は通年と考えると覚えやすい
補助金を利用しようと考える場合、公募期間以外は申請不可となり支給を受け取ることはできません。
申し込む補助金制度によっては年間で数回しかエントリーできないことも珍しくなく、事業主にとって補助金が必要なタイミングで公募がない・公募期間が短期終了するケースもあります。
助成金の場合は、補助金に比べ1年を通して事業主が申し込める制度が多くありますが、最近の働き方改革推進助成金のように通年の予定が、予算枠がなくなって早めに終了してしまうケースもあります。
お金を受け取りやすいのは助成金
補助金・助成金を比較してどちらがお金を受け取りやすいかを考えると、多くの場合で助成金の方が支給ハードルが低いといえるでしょう。
- 助成金はお支給されやすい支援制度
※助成金は補助金と違い公募要項を満たせば支給される
補助金は事業資金調達を検討するタイミングが多くの会社で被るため、申請が増えることで支給対象枠から外されるケースが少なくありません。
対して雇用支援を主とする助成金は、それぞれの募集要項にあった事業主であり事業計画であれば、実際に計画通りに実施されれば支給されるため、受け取りやすさでは圧倒的に助成金に軍配が上がります。
補助金は支給対象者が限られ審査ハードルが高い制度、助成金は募集要項を満たした事業計画でその通りに実施すれば給付される可能性が高いというイメージを持つとわかりやすいかもしれません。
補助金と助成金の共通事項
補助金・助成金は根本の支給目的は違いますが、多くの共通事項も存在します。
例えば補助金・助成金は前払いでの支給は認められず、どちらの制度も申請し募集要項の事業活動後にお金が支給されます。
これは事業計画が机上の空論ではなく実際におこなわれ、会社の経済活動にプラスに働いていることを行政機関が確認する目的があるからです。
また補助金・助成金は公募要項を満たし、支給目的に沿った事業活動費用として認められた場合、支給されたお金はどちらも全額返済する必要はありません。
しかし資金調達が目的となり虚偽の事業実態を報告したり、初めから補助金・助成金を騙し取る犯罪行為を犯した事業主に対しては、支給金額を全額返還・追加で規定の違約金の支払いが課せられるため、どちらの制度も不正受給がNG行為なのは周知の共通事項です。
お金の支給時期が後、清算後になる
補助金・助成金は原則後払いで事業主に支給されるため、先払いを見越して事業プランを決めてしまうとトラブルになります。
- 補助金・助成金は支給されるタイミングが事後になる
※必要なタイミングで受け取ることが難しい
補助金・助成金が先払いされないことを意外に感じる人もいますが、実際の事業活動を詳細に事実確認しなければ、行政が適正にお金を支給することはできません。
「先の予定は〇〇で多分〇〇になるのでお金が必要です」という申請ではなく「計画通りに〇〇したのでお金が必要です」という形で事業活動の実態を提示しなければ、厳正な審査や検証ができず支給が認められません。
申し込む補助金・助成金によって給付タイミングが違うため、支援制度の中身を精査し給付タイミングを把握しておきましょう。
補助、助成されたお金の返済は不要
補助金・助成金は原則として返済義務のない完全支給の事業支援制度です。
申請者が制度の趣旨を理解し計画通りに使う限りは、支給された補助金・助成金を返還する必要はありません。
- 補助金・助成金は返済不要で給付できる
※不正受給の事業主は20%上乗せなど規定に準ずる違約金を返済する
しかし申請情報を偽って補助金・助成金を受け取った場合や、規約に違反して給付制度を利用した場合は、給付が打ち切られ支給全額を返還しなければいけません。
またペナルティとして給付金額の20%の罰金や年5%の延滞金など、補助金・助成金の罰則に準じた違約金を払うことになるため、不正受給は絶対してはいけないことも暗黙の共通事項です。
補助金とは
補助金は事業主の起業・新規業務スタートのタイミングで必要になる資金を、返済不要で行政から資金調達できる支援制度です。
実績や信用が乏しく銀行からの融資が難しい場合でも、補助金制度を上手く活用することで無償で事業資金を確保できるメリットがあります。
また事業主が利用できる補助金制度は色々あり、細かく計画を立て最適な補助金制度をピックアップすることができます。
しかし公募期間が短く審査が厳しいという側面があり、仮に審査に通過し補助金を支給する資格がある場合でも、他社事業主に補助金制度が優先されることで、補助金を受け取ることができない可能性もあります。
補助金が必要で公募要項を満たすために長い準備期間を費やしても、確実に補助金を受け取れる保証がないことは、事業主にとって事業計画の大きな障壁になっています。
メリット
補助金は様々な業種で公募されており、業種によっても細かく支援制度が分かれているため、事業主が必要とする補助金制度を見つけやすいというメリットがあります。
- 補助金は支給金額が高く幅広い補助金制度を返済不要で利用できる
※補助金の種類が充実しており申請者のニーズに合わせやすい
事業主が利用できる選択肢が多いことで、事業主が事前に細かな事業計画を準備でき、事業拡大がおこないやすいのも魅力です。
また会社を起業したり新規事業をスタートさせるには高額なお金が必要になるため、返済不要の補助金は資金調達方法として理想的であり、支給金額の上限が高く設定されていることも大きなメリットです。
デメリット・注意するポイント
前述した通り補助金はエントリーできる公募期間が短く、年間を通して応募できる給付制度ではありません。
加えて事業主が公募基準を満たしていても、補助金を必要としている人が増えれば審査難易度が跳ね上がり、選考に落ちれば補助金支給対象外になるデメリットにも注意しなければいけません。
- 補助金は審査が厳しく公募期間も少ないため利用ハードルが高い
※公募基準を満たしていても必ず給付が承認される訳ではない
事業目的でお金を必要としている人はあなただけではありません。
毎年多くの企業が同時期に補助金制度を申請するため、事業主の競合他社が多ければ補助金の支給対象外になってしまう可能性は高まります。
補助金を見越して事業プランを立てている場合、補助金の選考に落ちてしまうと計画している事業展開の実現が難しくなるでしょう。
助成金とは
会社が永続的な経済活動を続けるためには、雇用や労働環境などの適時改善が必要になりますが、実行するためには大きな資金調達が必須条件になります。
助成金は主に雇用維持・労働環境や社内システムの整備を目的として、事業主が行政機関から無償で資金援助を受けることができる支援制度です。
助成金の最大のメリットは資金が貸与ではなく支給となり、事業主に返済義務が生じないことが挙げられます。
また原則として公募要項を満たしている会社で事業計画が認定されれば、選考対象外になることはなく、計画通りに実施できれば必ず助成金が支給されるため、競合他社の倍率に関係なくお金を準備することができます。
メリット
会社が労働環境改善目的で資金調達を検討するとき、行政からお金を受け取ることができる助成金制度は大きなサポートになります。
- 助成金は返済不要で企業が労働環境改善やスキルアップのお金を準備できる
※従業員の離職率を軽減に繋がり安定した労働力確保が実現する
前述した通り助成金は公募期間が長く、予算がある限り年度末まで応募することができるのが特徴です。
助成金を会社の労働環境改善に使うことで会社が働きやすい環境を構築し、その結果として労働者の離職率が軽減されたり、労災を防ぎ安定した事業継続が見込めることが大きなメリットになっています。
デメリット・注意するポイント
助成金は労働環境改善を目指す会社にとって魅力的な支援制度ですが、一方で注意しなければいけないデメリットもあります。
- 助成金の手続きが煩雑で負担が大きく受給までの期間が長い
※助成金の公募要項を満たす労力が増えればデメリットも大きくなる
この問題は「会社の最優先事項が助成金を受け取ること」になってしまうことで、助成金が根本的な問題解決のツールとして機能しないことがひとつの原因と考えられます。
あくまで助成金は会社改善の為に発生する必要経費であり、助成金獲得のために会社運営に合致しないシステムや制度を間に合わせで導入するのは本末転倒といえるでしょう。
自治体にも補助金や助成金があります
経済産業省や厚労省の助成金や補助金について説明してきましたが、自治体にも補助金や助成金があります。
補助金一覧
事業主が利用できる行政が施行する補助金制度は、経済産業省の管轄と地方自治体の管轄によって補助金制度の概要が違います。
- 補助金制度は地方自治体によって様々なパターンがある
※各役所のホームページやサポートダイアルで確認する
東京都を例に説明すると、事業承継・商店街・危機管理・設備投資・知的財産・生産性向上・サービスの7つのカテゴリーで補助金を区別し、公募要項や補助金の上限金額が異なることがわかります。
具体的には事業承継部門「事業承継支援助成金」・商店街部門「商店街起業・承継支援事業」・危機管理部門「サイバーセキュリティ対策促進助成事業」・設備投資部門「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」という補助金制度にエントリー可能です。
また知的財産部門「グローバルニッチトップ助成事業」・生産性向上部門「中小企業デジタルツール導入促進支援事業 」・サービス部門「「新しい日常」対応型サービス創出支援事業」など、業種によっても細分化されており、事業主の多種多様なニーズを満たす補助金制度が施行されています。
このようにそれぞれの事業部門で複数の補助金制度が導入されているため、補助金を必要とする事業主は事業内容にベストマッチする制度を、公募要項と照らし合わせピックアップしましょう。
下記に3つの国の補助金制度の概要を記載していますので、補助金制度申請の参考にしてください。
補助金名 | 特徴 |
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小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者を対象に50万円?200万円の上限金額で給付を受けられる 設備処分費・展示会等出展費・機械装置等費など11項目の補助対象経費目的で支給される |
IT導入補助金 | 中小企業を対象に通常枠・セキュリティ対策推進枠・デジタル化基盤導入類型の3種類の制度で30万~150万円未満・150万~450万円以下・5万円~100万円・5万円~350万円の範囲で支給 |
ものづくり補助金 | 一般型・グローバル展開型の2種類で上限金額は1,000万円・3,000万円まで 補助金の対象期間は給付から最大10か月間まで 補助事業期間の前後の支出については補助金が下りない |
助成金一覧
補助金同様に利用できる制度が多数ありますが、厚生労働省以外の公募概要は都道府県によって違うため事前に詳細を確認しておくことをおすすめします。
- 助成金の申込は公募概要を確認しベストな制度を利用する
※似たような制度でも公募期間や助成金の上限金額が違う
東京都を例にすると「社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金」・「DXリスキリング助成金」・「介護サービス事業者緊急支援事業給付金」・「魅力ある職場づくり推進奨励金」・「営業活動促進事業助成金」・「オンラインスキルアップ助成金」など、様々な助成金制度が施行されています。
助成金制度を申請予定の人は対象の公募要項を熟読し、条件を満たしていること・エントリーする助成金制度が事業目的と合致しているかを熟考して助成金を有効に利用してください。
下記に3つの国の助成金制度の詳細を記載しますので、補助金制度との違いなどを確認しながら助成金申請時の参考にしてください。
助成金名 | 特徴 |
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雇用調整助成金 | 主に雇用保険の被保険者である従業員を対象とした助成金制度 事業縮小休業により対象月3カ月間の月平均値が前年同期と比較して10%以上減少していれば申請可能 |
中途採用等支援助成金 | 企業が中途採用目的で利用できる助成金・中途採用等支援助成金 生産性向上助成の2種類あり給付条件が異なる |
トライアル雇用助成金 | ハローワーク・職業紹介事業者経由で雇用した企業に給付される助成金 トライアル期間は原則3ヶ月間となり雇用者が1週間30時間以上の労働時間を確保することが支給条件 |
この記事の監修社会保険労務士 |
菅田 芳恵 |
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事務所 | グッドライフ設計塾 |
資格 | 社会保険労務士、特定社会保険労務士、他 |
所属 | 愛知県社会保険労務士会 |
備考 | セミナー情報 | グッドライフ設計塾 |
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