国民年金を支払わずにいるとどのようなデメリットがあるのでしょうか。差し押さえ条件とリスク、対処方法について解説していきます。
差し押さえの対象としては、未納が7か月以上続き、年間所得が300万円以上ある方です。自身は未納していなくても、家族が支払っていないと300万円以下でも支払わないといけない可能性もあります。
差し押さえまでの流れとしては、電話や書面での通知、特別催告状や督促状などが届くようになります。最初の段階は、支払いがないことの通知のみとなりますが、徐々に強制徴収を行うことの旨が記載されていきます。
未払いの場合に差し押さえられる財産として、不動産が挙げられます。この場合、自身が住んでいる不動産であっても対象となり、競売にかけられることとなるため、差し押さえになる前に対処することが必要です。
対処方法としては、免除や猶予を相談することができます。支払いがない通知がきてから、すぐに相談することで差し押さえを免れることにつながります。
- 国民年金の強制徴収は、7か月以上滞納で年間所得が300万円以上の人
- 国民年金を未納すると、差押予告通知書が届く
- 国民年金の差押えは、収入の4分の1が対象となる
- 国民年金の差し押さえは、配偶者や世帯主の財産も対象となる
- 国民年金未納の差し押さえの解決策として、分割払いという方法もある
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国民年金の未納・未払いだと差し押さえはどのくらい対象になる？
国民年金が差し押さえになる条件について見ておきましょう。
- 7か月以上の滞納だと差し押さえになる
- 所得が300万円以上の方は差し押さえ対象
国民年金の未納が7ヶ月以上経ってしまうと、差し押さえに繋がります。未納の原因としては、支払い忘れによる事が多いです。しかし、滞納から一定期間が過ぎると催促の連絡がきます。
また、国民年金の強制徴収の条件としては、年間所得が300万円以上の方です。300万円以下の方でも、家族が未納であると自身の財産の差し押さえの可能性もあります。
強制徴収対象者は、未納期間が7ヶ月以上ある人
国民年金は、7ヶ月以上の滞納をしてしまうと差し押さえの対象となってしまいます。以前は、13ヶ月となっていましたが、6ヶ月短縮され条件が厳しくなっています。
ちなみに国民年金の未納の原因としては、支払い忘れが原因となる事が多いです。給与から天引きされるサラリーマン以外のフリーター、自営業者などは忘れずに支払うようにしてください。
未払いの場合は、ハガキや特別催促状などでの連絡がきますが、7ヶ月以上経ってしまうと、財産の差し押さえにつながる事になります。
年収基準はあるが(控除後300万円以上)以下でも対象となる可能性がある
国民年金を支払う対象となるのは、年間の所得が300万円以上の世帯主の方です。これは、年間の収入から控除を引いた額となります。以前は、所得が400万円程が対象でしたが、現在は300万円に下がっており、厳しくなっています。そのため、自身の所得額を確認しておくことが必要です。
会社員として働いている方は、源泉徴収票が渡されると思いますが、給与所得控除額という記載があるので確認するようにしてください。
フリーランスとして働いている方は、確定申告の際の合計金額を確認してください。会社員は給料から天引きとなりますが、フリーランスは自身で支払う必要があるためお気をつけてください。
また、年間所得が300万円以下でも強制徴収、差し押さえが行われる可能性があります。家族に国民年金の未納の方がいた場合には、連帯責任として支払わなければならない可能性があります。自身だけではなく、家族についての支払い状況も確認しましょう。
国民年金を未納で差し押えになるまでの流れ
差し押さえになるまでの一連の流れはどのようなものになるのでしょうか。
- 電話や書面での連絡
- 特別催告状、最終催告所が届く
- 督促状で請求される
- 差押予告通知書で差し押さえになることが予告される
- 差し押さえ
国民年金の未納から7か月経つと差し押さえになります。差し押さえの流れとしては、最初に電話や書面での催告がなされます。この際、すぐに支払いやすぐに払うことのできない旨の相談を行えば、柔軟に対応してくれる可能性が高いです。
次に、特別催告状、最終催告状が届きます。両方とも書面での請求であり、特別催告状は、青色、黄色、赤色と信号のように封筒が変化していきます。最終催告状は、早急に支払うことができなければ、差し押さえることが記載されています。
最後に差押予告通知書が届き、差し押さえがされます。差し押さえに関しては、日程などは共有がされません。
電話・書面で催告される
国民年金を滞納してしまった場合として、最初に電話や書面での連絡がくるようになります。その際は、国民年金が納められていない事、未納期間などが伝えられ、支払いを求められます。書面は、納付書と呼ばれる書類が届きます。
また、場合によっては自宅訪問もあります。この時点で支払いを行えば、延滞金や差し押さえなどの不利益を被る事はありません。
特別催告状が届く
電話での連絡や納付書での通知が来ても国民年金を支払わないままでいると、特別催促状という書類が届きます。
特別催促状は、年金を請求する書類であり、封筒の色が青色、黄色、赤色と種類が分かれています。最初は青い書類が送付されますが黄色、赤と変化していきます。青色の書類の場合は、支払いが遅れていることの説明のみですが、赤になると財産の差し押えの説明が追加されます。
そのため、特別催促状が届いた場合には、青色の段階で年金を納めるようにしましょう。赤色まで放置する事は非常に危険です。
最終催告状が届く
特別催促状が届いているにも関わらず、それにも対応しないと最終催告状という書類が届きます。
最終催告状には、期限までに支払いがなければ差し押えの準備を始めること、指定の窓口に相談を行うことという文面が記されています。この段階に入ると厳しい対応がされることが記載されるようになります。
最終催告状は、名前の通り最後の警告として送られている書類です。対応しないままでいると、延滞金が課せられ支払う額が増えたり、財産の取り押さえに繋がります。延滞金については、3ヶ月以上の未納になると割合が増えてしまうためご注意ください。
督促状が届く
最終催告状も無視してしまうと、督促状が送付されます。こちらは期限までに支払いが終わらなければ、延滞金が課せられてしまうことが示されています。3ヶ月以上経ってしまうと延滞金の額が大きくなってしまいます。ご注意ください。
差押予告通知書が届く
これまで送られてきた警告の通知に何も対処していないと差押予告通知書が送られます。
これは、日本年金機構が年金未納者の財産について調べ、差押えができる財産を確認します。その後に、差押えが行われる旨についての記載がある差押予告通知書が送付されます。また、年金を滞納している個人だけでなく、その家族に関しても差押えがされる事があります。理由としては、世帯主や配偶者も国民年金の支払い義務があるためです。
しかし、この差押予告通知書が送られてきた時にすぐに国民年金の窓口にて相談すると、差押えを防げる可能性があります。とにかく支払う意思を見せる事が必要です。この段階になってしまった方は急ぎでの対応が求められます。
財産を差し押さえられる
最後の警告である差押予告通知書の対応がなされないと、財産の差し押さえが行われます。
財産の差押えとしては、給与、不動産、車、貯金、配偶者の財産の5つです。
財産の差し押さえは、予告せずに行われるので、年金請求の通知が来た時点で支払うべきです。
国民年金の未払いで差し押さえられるものは何？
差し押さえで対象となる財産としては、以下の5つが挙げられます。
- 収入
- 貯金
- 家、不動産
- 車
- 配偶者の財産
まずは、毎月の収入や貯金が優先的に差し押さえの対象になります。給与に関しては、すべてが差し押さえられるわけではありません。手取り額の4分の1が差し押さえになります。
次に自宅や車が差し押さえとなります。自身が持っている家や不動産であっても競売にかけられ、自由に売却などができなくなります。車に関しては、資産価値が低ければ差し押さえることがありません。
そして、本人から差し押さえができなければ家族である配偶者から差し押さえることもあります。これは、法律上で国民年金の納付は配偶者も連帯責任とされているためです。家族に迷惑をかけることにもつながるため、必ず支払いを済ませるようにしましょう。
毎月の給料、毎月の収入
差し押さえの対象として、給与が挙げられます。差し押さえは、給与から所得税や住民税を控除した額が対して行われます。その際には、法律で生活に困らない額として、給与から手取り額の4分の1の額を差し押さえと規定されています。
手取り額の4分の1が差し押さえ額となるため、「今すぐ生活に困る」という事態は避けられると思います。しかし、給料の全額が受け取れなくなる、会社に知られて信頼を壊しかねないというリスクがあります。そのため、差し押さえにならないように対策を練ることが必要です。
口座にある預貯金
国民年金が未払いになった場合、個人の貯金も差し押さえの対象となります。これは、債権差押命令という書類が銀行に送付され、預貯金が自由に下ろせなくなります。
口座の残高が差し押さえになると、生活に困ってしまう可能性がありますので、お気をつけてください。
自宅・不動産
自宅や不動産を持っている方も差し押さえの対象となります。不動産等の差し押さえが行われると不動産を売る事も担保にしてお金を借りる事もできなくなるというデメリットがあります。
不動産の差し押さえの流れとして、裁判所から競売開始決定通知があり、現地訪問による調査、基準価格が決まる事になります。そして、不動産会社が物件を見学にくるようになります。
その後に競売が開始され1番高価な価格を提示した者が買い取れるようになります。
このように、不動産は差し押さえされる事で自己所有のものとして扱う事ができなくなるため、競売にかけられたくない方は、国民年金を滞納しないようにしてください。
車
車も不動産と同様に差し押さえの対象です。差し押さえは、基本的に給与や預貯金が先に行われる事が多いため、車については後になる事が多いです。
差し押さえの対象となる車については、財産としての価値がある事が挙げられます。つまり、換金可能ということです。具体的には20万円以上の車が差し押さえの対象となります。
また、地方などの生活に必要不可欠な車や仕事で使用する車については差し押さえの対象外となる事が多いです。これは、民事執行法131条で日常生活を送る事に欠かせない物の差し押さえを禁じているためです。そのため、自身の車が差し押さえの対象か確認しておきましょう。
滞納をしている人の配偶者・世帯主の財産
国民年金を未納している場合には、未納者本人だけでなく、配偶者などの財産も差し押さえられる危険性があります。
理由としては、国民年金法88条で配偶者や世帯主も連帯して支払う義務があると定められているためです。
そのため、本人が国民年金を未納、差し押さえする財産もない場合、配偶者や世帯主が代わりに差し押さえられる可能性があるのです。家族に迷惑をかける事にも繋がるため、国民年金の未払いは注意が必要です。
国民年金未納で銀行口座や給与が差し押さえられたらどうなる？
給与などが差し押さえられることで、以下のリスクがあります。
- 自由に自分の口座からお金を引き出せない
- 給与が減らされてしまう。
まずは、口座が差し押さえられるため、現金の引き出しができなくなります。この時には、全額が差し押さえられるのではなく、滞納分と延滞金、差し押さえにかかる費用が引き出すことができなくなります。他の支払いにも影響が出てくるためご注意ください。
他にも、給与がカットされる事態になります。滞納している金額が高額でも手取り額の4分の1の給与が差し押さえの対象です。生活が出来なくなる程の金額ではないかもしれませんが、完全に未納分を支払うまで続くためお気をつけてください。
自分の口座からお金を引き出せなくなる
銀行口座を差し押さえられてしまうと、差し押さえられた金額の引き出しが出来なくなってしまいます。そのため、クレジットカードやサブスクリプション、公共料金の支払いを口座振替で行なっている場合は、支払いができなくなってしまいます。これらの支払いも出来なければ、サービスの利用停止、延滞金の発生、差し押さえが行われるなど悪循環を生むきっかけとなります。そのため差し押さえがされる場合には、他の支払いに影響が無いか確認する必要があります。
また、銀行に預けているお金の全額が差し押さえされる訳ではありません。あくまで請求額や差し押さえ執行にかかる費用ですので、ご注意ください。
給料が満額受け取れない
給与も差し押さえの対象として、満額受け取れなくなります。この場合、差し押さえの対象としては、民事執行法152条1項により給料の4分の1となっています。
また、ボーナスや退職金も差し押さえされる事になります。これらの給与を生計に立てている方は注意が必要となります。
そして、給与の差し押さえの期間としては、請求された金額が完済されるまで続きます。国民年金の未納費だけでなく、遅延損害金、差し押さえにかかる費用についても完済しなければ差し押さえが続くようになります。差し押さえられてしまうと会社への通知も行く可能性があり、国民年金の未納が知られてしまう事になります。
国民年金が払えないで差し押さえられる前にできる対処方法
差し押さえの前にできる対処方法として以下の方法を行いましょう。
- 国民年金の免除や支払いの猶予の相談をする
- 分割支払いの手続きを行う
- 弁護士に相談し、債務整理を行う
国民年金が払えない場合は、早めに相談することで免除や納付猶予ができます。免除は、全額から4分の1まで、所得状況によって変動します。猶予は、50歳以下の方は活用可能です。免除や猶予を行うことで不慮の事態になった際に、障害年金などをもらうことも可能です。
また、国民年金1か月以上の額を分割して支払うこともできます。こちらもお早めに相談することで調整がしやすくなります。
そして、他にも借金がある場合には、弁護士への相談をして債務整理を行うことが挙げられます。借金の債務整理を行うことにより、返済を楽にして計画を立て、国民年金を支払いへと繋げられます。注意点としては、債務整理は国民年金に対しては行うことができません。
免除・納付猶予ができないか相談する
国民年金は、免除や納付猶予をすることができます。免除に関しては保険料免除制度と呼ばれており、低所得や失業等で年金を支払うのが難しい場合に行うことができます。免除される額として少額の4分の1から、半額、4分の3、全額のいずれかとされています。方法としては、年金未納者の本人から申請書を提出することで免除申請を行うことができます。しかし、デメリットとしては、年金を受け取る際に、満額支払った場合の2分の1の金額となってしまうことです。
猶予は、保険料納付猶予制度と呼ばれており、前年度の所得を審査して猶予できるかが決まります。注意点としては50歳以上の方は猶予制度を使用することができないことです。また、学生の場合も学生納付特例により、年金の支払いを猶予できます。
そして、これらの制度を使用することにより、病気や死亡などの場合に障害年金や遺族年金の受け取りが可能です。
免除、納付猶予については、年金の支払いの催告が届いて対処しない場合には制度を活用することができません。「どうしてもしばらく払えそうにない」という場合には免除や納付猶予の相談を行うようにしましょう。
年金事務所で分納・分割の手続きをする
国民年金を滞納している場合の対策として、分割して支払うという選択肢もあります。特別催促状や最終催促状が送付された段階で年金事務所での相談を行えば、分割することが可能になるケースがあります。催促の連絡が届いた段階で相談することにより、分割、分納ができる可能性が大きくなるため早急な対応を心がけましょう。
また、分割の場合、最低金額は国民年金の1か月分からとなっています。それ以下の金額での支払いはできないため分割にして払えるかどうか確認しましょう。
年金以外にも借金があって払えないなら弁護士に相談する
「他にも借金があり、支払うことができない」という方は、弁護士に相談して債務整理を行うこともできます。借金は、消費者金融やカードローンの場合は債務整理が可能ですが、国民年金の場合は義務のため債務整理を行うことができません。
しかし、国民年金以外の借金がある場合には、それらの借金を債務整理することにより、国民年金の未納分を支払うことに繋がります。そのため、1人で悩まずに弁護士に相談することをお勧めします。
債務整理は以下の4種類あります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
①の任意整理は、債権者との調整を図り将来の利息を無くし、返済していきます。②の個人再生は、裁判所への申し立てを行い借金の減額を図ることです。③の自己破産は、最後の手段として、財産の一部を処分することで借金の支払い義務を無くすことです。④の特定調停は、裁判所への申し立てを行い、将来利息を無くすことで返済額を減らす方法です。
このように、国民年金以外の借金がある際には、弁護士に相談して債務整理を行うようにしてください。
未納なのが年金のみなら債務整理はできない
上記で、弁護士に相談を行い債務整理をするという方法をご紹介しましたが、国民年金以外に借金がない場合には債務整理を行うことはできません。破産法253条1項により、社会保険料は国民の義務のため、免責されないのです。
しかし、先ほど解説したように、年金事務所での相談を行うことにより、免除や猶予の申請を行うことができます。所得の減少や失業等の際には認められる可能性が高くなります。また、分割払いをすることもできます。そのため、国民年金を支払えていない場合には、放っておくのではなく、早急な対応をすることで差し押さえを防ぐことができます。
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| この記事の監修者 | 山口みき |
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