支払い滞納・延滞・遅延の時

税金滞納して差し押さえで生活ができない場合の対策はどうする?差し押さえまでの流れ・解除方法等解説

税金を納めることは、日本国民である以上「義務」です。扶養に入っている、などしかるべき理由がない限り、納税義務から逃れることは出来ません。

ですが、すでに借金が膨らんでいるなどの理由によって、税金の支払いを後回しにしてしまう人もいます。滞納した結果、差押えが実行され、元々余裕のなかった生活がさらに困窮してしまう可能性も十分に考えられます。

このような事態に陥らないためには、どのような対策を講じるべきなのでしょうか。また、すでに差し押さえが行われてしまった人は、今後どういった方針を取ればよいのでしょうか

この記事ではそんな「差し押さえによる生活苦」を少しでも楽にするための方法を紹介しています。ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること
  • 税金滞納は、滞納する前に役所や民間団体に相談しておくべき
  • 税金滞納後では、納税額の減額は一切受け付けられない
  • 税金滞納を踏み倒しても、必ず差し押さえで返済することになる
  • 税金滞納しても「督促」や「訪問」時に支払ってしまえば、問題ない
  • 税金滞納すると、真っ先に差し押さえられるのは「給与」と「預金口座」
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税金滞納後の差し押さえで生活ができない場合の対策

税金の滞納を続けると「差し押さえ」が待っています。この記事でも後ほど詳しく説明しますが、差し押さえの対象となるものは「給料」・「預金」・「不動産/債券」といった金銭的価値のある資産です。

こういった資産を差し押さえられてしまうと、やはり生活が立ち行かなくなる可能性は十分にあります。

このような事態に陥ることを避けるためにも、税金を滞納してしまう前に対処策を講じておきましょう。

  • 国や役所に相談
  • 無料相談できる団体やフリーダイヤル
  • 債務整理

いずれの相談方法も費用のかかるものではありません。

特に「国や役所への相談」は最も解決に近いものです。そもそも税金を管理しているのはこの「国や役所」です。彼らに直接相談することで、納税期限を延長してもらったり、分割での納付を認めてもらったりする可能性があるからです。

何によらず、一人で抱え込むのではなく、しかるべき機関に相談することが先決です。

税金が納められなくても事前に国・役所に相談をする

税金が納められるような状態にない場合、まず真っ先に相談すべきなのは納付先である「国や役所」です。

税金を納めることは市民としての義務です。しかし、納付出来ない正当な事情があるのであれば、相談をすることで対応策を講じてくれることも多々あります。

では実際に相談する際、どこに連絡をすればよいのでしょうか。

実は日本では税金の種類に応じて、それを管轄する行政機関は異なります。以下の表にまとめてありますので参考にしていただればと思います。

「所得税」と「相続税」は「税務署」が一括管理していますが、「住民税」と「固定資産税」は「市区町村」が、「自動車税」は「都道府県」がそれぞれ管理しています。

相談をするのであれば、以上の区分を元にして、「自分が納められない税金の種類は何か」を把握しておくことが重要です。例えば、「所得税」の納付について「市区町村」に相談しに行っても対応してもらうことは出来ません。しかるべき場所に相談してください。

税金の種類 相談場所
所得税 税務署
相続税 税務署
住民税(市町村民税・道府県民税) 市区町村
固定資産税 市区町村
自動車税 都道府県

税金滞納を無料相談できる団体やフリーダイヤルを頼る

税金の滞納については、国や役所といった行政機関以外にも相談を行うことが出来ます。

民間のボランティア団体などで「無料」で相談を行うことも可能です。相談料は一切かからないことが多いですので、「滞納」以外にも税金について心配ごとがあれば気軽に連絡をしてみるのが良いです。

具体的には、「滞納相談センター(03-6805-6330)」といった団体が挙げられます。

民間のボランティア団体といえども、その内容はかなり充実しています。弁護士や税理士といった各領域の専門家をスタッフとして抱えていますし、それ以外のスタッフも何件もの相談に対応する中で豊富な経験を備えています。

こういった団体の目的はやはり「生活の立て直し」です

税金を支払えないとなると、どうしても恥ずかしくて周囲の人に相談しづらいという事情があると思います。しかし、誰にも相談しないことが一番悪い選択です。

一人で問題を抱え込んでしまっても、事態をただ悪化させてしまいます。団体の方々はそのような相談事には慣れていますので、恥ずかしがらず頼れるだけ頼ってください。

税金以外の借金があれば債務整理を検討する

借金は「税金の滞納」だけとは限りません。金融機関からの借り入れ(カードローンやクレジットカード)が積み重なり、生活を圧迫していることも考えられます。

こういった借金は債務と呼ばれます。債務は滞納すればするほど、返済すべき金額が増えていく仕組みです。このため、自力では返済する余裕がないからと返済を先延ばしにしていると、どんどん借金が膨らみ、挙句の果てには借金地獄から抜け出せなくなります。

このような方を救済する措置として「債務整理」という手段があります。

債務整理は国によって認められた救済制度であり、簡単に言うと「借金を自力で返済できる金額までカットする」という内容のものです。

ですが、一つだけ注意点があります。

それは「税金は債務整理の対象にならない」ということです。

ですので、債務整理が出来るのはあくまで金融機関からの借り入れだけです。

このような説明を行うと、結局意味がないのではないか、と思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、金融機関からの借り入れだけでも債務整理すれば、生活はグンと楽になるはずです。これをきっかけに生活を立て直し、税金の支払いも行っていけばよいのです。

税金滞納後の差し押さえからは逃げられない

税金の滞納を続ければ、いつか逃げ切れるのではないかと思われるかもしれません。しかし、現実は決して甘くはありません。滞納を続ければ、必ず差し押さえが実行されるような仕組みになっています。

ここでは税金の滞納から差し押さえが行われるまでの間で、知っておくべきポイントについて紹介します

  • 税金の踏み倒しは出来ない
  • 差し押さえは給料全額ではない
  • 差し押さえ前の通知や裁判はない

税金は踏み倒し続けられるものではありません。いくら逃げても、優秀な行政機関のシステムによって、必ず見つかってしまいます。金融機関に登録している給与口座を差し押さえられてしまえば、知らないうちに納付が完了していることもあります。

滞納した税金は減額できない、踏み倒しもできない

税金について気を付けるべきポイントとして、「一度滞納してしまうと、その後減額することが出来ない」ということが挙げられます。

記事の冒頭で税金を滞納しそうな際は、「国や役所」に相談するべきだとお伝えしました。こうすることで場合によっては税金を減額できる可能性もあるわけです。

ですが、減額が出来るのはあくまで「滞納する前」の段階で相談にいった場合のみです。一度滞納してしまうと、いくら相談しても金額を減らしてもらうことは難しいからです。

ただし、返済方法については相談の余地があります。税金は基本的に一括納付となっていますが、それ相応の事情がある人に限っては分割払いや返済期限の延長を検討してくれる可能性があります。

当然ですが税金を踏み倒すことはできません。日本の行政機関は非常に優秀ですので、システムによって必ず感知されてしまいます。

また、住民票に登録されている住所から逃げても、日本で生活する上ではどこかで必ず行政機関を利用することになるでしょうから、足がついてバレます。

給料が全額差し押さえられる訳ではない

税金の滞納を続けると給料が差し押さえになることは事実です。ですが、かならずしも給料の全額が差し押さえになるわけではありません。その点はご安心ください。

実際に差し押さえの対象となるのは、月の給与の4分の1までと定められています。

また、手取りが33万円を超えていると、「その給料の4分の1」と「元の給料と33万円の差額」の内、金額の高い方が差し押さえの対象となります。

例えば、月収30万円であれば7万5000円が対象です。月収60万円であればその4分の1は15万円ですが、60万円と33万円の差額27万円の方が高いので、後者27万円が対象となります。

ここで差し押さえの仕組みについて軽く触れておきましょう。

今の世の中で、給料を現金で受け取っている人は皆無でしょうから、ほとんどの人がこの「給与口座」で給料を受け取っているはずです。

そして、差し押さえの対象となるのはこの「給与口座」です。金融機関に登録している口座は、行政機関の権限によって妥当性がある場合にのみ、差し押さえ(凍結)させることが可能です。

凍結された口座は、利用者側が自由に操作することは出来ません。しかし、全額が没収されるのではなく、あくまで「滞納した税金に相当する金額」が没収されます。つまり給与組座から強制的に税金が支払われるという仕組みになっているのです。

このような手順で給料の差し押さえは完了します。

給与差押え前には通知はこない、裁判もない

では給与の差し押さえはどのタイミングで実行されるのでしょうか。

実は差し押さえが行われるタイミングが事前に知らされることはありません。

それもそのはずです。差し押さえを実施する旨を当人に伝えてしまえば、差し押さえ前に給与口座からお金を抜いておくなど、対策を講じられてしまいます。こういったことを防ぐために、差し押さえはいきなり行われるのです。

ですが、通知が全くないわけではありません。給与差押えの通知は、給与の支払元である「勤め先」に届くことになっています。そのため、本人の許可を待つことなく手続きは進行します。

さらに、事前に裁判が行われることもありません。クレジットカードやカードローン等の債務の滞納時には裁判が行われれますが、なぜ税金では裁判がないのでしょうか。

その理由は「税金の滞納は義務であり、納付しない人に責任があることは明白だから」ということが理由に挙げられます。

カードローンやクレジットカードの滞納に関しては、もしかすると金融機関が誤った請求をしている可能性もあります。

実は支払いが済んでいるのにまだ請求が来る、金融機関が設定した金利が実は不適切な水準だった、といった可能性を検討するために裁判は必要不可欠なのです。

ですが、税金の納付はあくまで義務です。逃げずにきちんと支払いましょう。

税金滞納後の差し押さえまでの流れ

税金を滞納してから、差し押さえが実行されるまで、いくつかのステップが存在します。

  1. 督促状
  2. 訪問
  3. 財産調査
  4. 差し押さえ

一目見て分かるように、滞納したからといってすぐに差し押さえになるわけではありません。

まず最初に「督促状」による支払いの催促が行われます。督促状という書類が自宅に届きます。この書類の中には「支払いを促す」旨や「支払い金額」、「支払い期限」などの情報がに加えて、「滞納を続けると差押えを行う」旨も記載されています。

督促状が届くのは、最初の滞納からおおむね20日前後が経過したタイミングだと言われています。

次に「訪問」が行われます。「訪問」では調査員が直接自宅に訪問してきて、支払いを促されます。直接担当者と対峙しますので、説得されてこの段階で支払ってしまう人も多いようです。

また、単に納付のし忘れや督促状の存在に気付いていなかった人も、この「訪問」で気付いて支払ってしまうようです。

「督促状」と「訪問」でも支払わない場合、いよいよ差し押さえに近づきます。ですが、その前に「財務調査」が行われます。この段階で、その人に「どの程度の財産があるのか」を調べることによって、実際に差し押さえをする際の参考にします。例えば不動産を所有していればその資産価値が計算されますし、給与口座があるかどうかも確認されます。

そして最後に「差し押さえ」です。先ほど「財務調査」で調べた内容に基づいて、財産の差し押さえが行われます。給与口座であれば必要な金額が抜かれますし、不動産であれば売却され売却代金から滞納額の支払いに充てられます。

税金滞納後の差し押さえ解除方法

一度差し押さえされてしまったからといって、その状態がずっと続くわけではありません。滞納額の支払いを完了させたり、ある条件を満たせば、差し押さえは解除されます。

ここではその差し押さえの解除方法を紹介します。

  • 不動産を売却する
  • 自己破産をする

以上2つの方法を使えば差し押さえは解消できますが、生活に余裕がなくなってしまうことも事実です。あくまで最終手段として考えると良いかと思います。

不動産を売ってお金に換えて税金を完納する

差し押さえの状態を解消するためには、滞納していた税金を全額支払うことが求められます。

給与口座に余裕なお金がある人は、そのお金が差し押さえられて支払いに充てられることで、差し押さえの状態は解消されます。

ですが、必ずしも口座にお金がある人ばかりではないでしょう。差し押さえになるまで滞納するような人の中には「そもそも現金(キャッシュ)がない」ことも考えられます。

そのような人に対しては、「不動産の差し押さえ」が行われます。不動産の差し押さえに関しては、給与口座のそれとは少し手順が異なります。

まず、不動産は現金ではありませんので、売却して現金化する必要があります。この売却は「公売」にかけられることで行われます。国税庁が公売を行いますが、買い手が付けば取引成立となり、売却資金が得られます。

この売却資金から滞納した税金に相当する分が差し引かれ、返済に充てられる、という流れになります。

このように不動産が差し押さえの対象となると、不動産が自分の所有からなくなってしまうことになります。

自己破産をして差押え手続きを中止→解除

結論から申し上げますと、自己破産をしても納税義務が消えることはありません。また、差し押さえの対象から外れることも出来ないのが現実です。

しかし、場合によっては「差し押さえを停止」することも可能です。その方法とは「滞納処分の停止」という制度の活用です。

そもそも財産の差し押さえは「その人の生活を困難にしない程度」と範囲が定められています。ではこの範囲から逸脱するのはどのようなケースでしょうか。

それには3つの場合があります。

  • 「差し押さえ可能な財産がない」
  • 「差し押さえによって生活が困窮する」
  • 「滞納者と財産の所在が不明」

これらいずれかの条件を満たすと「滞納処分の停止」を受けることが出来ます。そして、この状態が3年間続くと、公に税金の支払い義務を免除してもらうことが出来ます。

以上のことから、差し押さえを解除出来る人は本当に生活に苦しんでいる人だということが見て取れるでしょう。自己破産をする人は経済的余裕が一切ないと言えますので、結果的に差し押さえから逃れることが可能なのです。

税金滞納後に差し押さえされるもの

最後に税金滞納で差し押さえになる財産の種類を知っておきましょう。

  • 給料の4分の1
  • 預金口座
  • 不動産や債券

一口に財産といっても、その処遇は財産ごとに異なります。特に給料と預金口座は差押えの対象になりやすいため、注意が必要です。

給与の4分の1まで

実は給料の差し押さえには上限額が設定されています。

給料の手取り額の4分の3は、差押禁止債権に指定されており、差し押さえの対象とすることは出来ません。

参照 :民事執行法 | e-Gov法令検索

ここでポイントなのは「給料の手取り」だということです。手取りとは、税金や社会保険料などを差し引いたうえでの金額です。

例えば給料が手取り月30万円であれば、差し押さえの対象となるのは、その4分の1である7万5000円です。

ただし、手取りが33万円を超えていると、「その給料の4分の1」と「元の給料と33万円の差額」の内、金額の高い方が差し押さえの対象となります。

例えば、給料の手取りが44万円であった場合、その4分の1は11万円です。また、44万円と33万円の差額は10万円です。その結果、金額の大きな11万円が差し押さえられます。

給料の手取りが60万円であった場合、その4分の1は15万円です。また、60万円と33万円の差額は27万円です。結果、金額の大きな27万円の方が差し押さえられます。

このようにいくら差し押さえといっても、法律によって全額が没収されるわけではありません。

銀行口座にある預金

給与と同様に銀行口座にある預金も、差し押さえの対象となりやすいものです。

なぜ対象となりやすいのかというと、これらを差し押さえる際に生じる費用が低いことが挙げられます。給与や預金は最初から現金として存在していますので、差し押さえればそのまま返済に充てることが出来ます。

また、こういった差し押さえは簡易裁判所から「差押命令」を出してもらった上で行われますが、給与や預金の方がこの「差押命令」を出してもらいやすいという事情もあるようです。

預金口座の差し押さえに関して抑えるべきポイントは、「差し押さえの対象となるのは、あくまでその時点での預金額」ということです。

差し押さえが実行された後も、その口座にお金が振り込まれる場合はありますが、後から振り込まれたお金に関しては、一切差し押さえの対象とはなりません。つまり、その分は自由に使うことが出来るのです。

不動産や債券も対象だが無いことが多い

給与や預金と同様に、不動産や債券も資産としてカウントされます。

ですが、これら不動産や債券が実際に差し押さえの対象となるケースは珍しいと言われています。

その理由は2つあります。

1つ目の理由は、「手間がかかる」からです。

先ほど説明したように給与や預金は最初から現金として存在していますので、換金する必要は一切ありません。差し押さえれば、そのまま支払いに充てられます。

ですが、不動産や債券は現金ではありません。一度、売却して現金化する必要があります。不動産も債券も買い手を見つけなければならないのです。

特に不動産に関しては、土地や建物を調査して価格を算出し、インターネット上で買い手を見つけるという手順が余計にかかります。差し押さえとなった土地をわざわざ購入したいと思う人が少ないことも、手間がかかる理由に挙げられます。

2つ目の理由は「すでに不動産や債券を手放している」からです。

税金を滞納するような状態に陥っている人は、経済的にかなり困窮しています。そのような人が不動産や債券をわざわざ残しておくでしょうか。通常であれば、資産価値のあるものはすでに売却して、生活の足しにしてしまっているでしょう。この場合、不動産や債券を差し押さえたくても、それが出来ないという事情があります。

このように不動産や債券はめったに差し押さえられることはありません。しかし、給与や預金だけでは滞納額に達しない場合などは、不動産や債券も差し押さえられます。

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この記事の監修者 山口みき
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